恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「今は…ってことは、前は好きだったんですよね?」
「そうねぇ、好きになる手前って感じだったかな?でも、食事に誘ったりいろいろアプローチしてみても、古庄先生なびいてこないし、そんな相手にされない自分が虚しくなったのよね」
「そうそう。彼っていつも新聞読んでて、とても物知りでしょ?だから何でもないことをわざわざ彼に質問しに行ったりしてたんだけど、真面目に答えてくれるだけ!それ以上何も進展しなかったわ~」
谷口と中山は面白そうに言い合って、声を立てて笑った。
表立っては分からないが、大概の女性は水面下で、何かしら古庄に行動を起こしているということだ。
目の前で繰り広げられている古庄談義を、真琴はドキドキと激しい鼓動を打ちながら口も出せず、ただ黙って聞いていた。
初めから分かっていることだけれども、古庄がこれだけモテるということを、真琴は改めて思い知らされた。
「賀川先生はどうなんですか?…古庄先生と仲がいいみたいですけど……」
いきなり理子からそう振られて、ドキッと真琴の心臓がいっそう大きく脈打つ。目を見開いて、不安そうな理子の表情を捉えた。
「…わ、私は、出会った時から特に何にも思わなかったし。古庄先生と同じ学年で同じ教科で、たまたま接点が多いだけだから」