恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



 今こそ、結婚はしないと断言している谷口だが、今に至るまでにはたくさんの恋愛を経験してきているのだろう。熟練者の含蓄のある言葉だった。


「私、古庄先生と同じ年に赴任してきたんだけど、この4年半、彼には全く女っ気っていうものは感じなかったわね~。確かに、彼に想ってもらうっていうのは、難しいかも」


 というのは、石井である。彼氏のいる石井は、さすがに古庄には言い寄らなかったらしいが。


「生徒を含めて、これだけいろんな女の人からモテてるのに、女っ気がないとは…!もしかして、古庄先生ってホモなんじゃない?」


 中山が笑いながらそう言うと、谷口と石井も吹き出した。


「それ!あり得るかも~」


「ラグビーやってて、いい体してるから、その筋の人からもモテそうだしね~」


 などと言いながら、他人事の3人は笑い転げている。

 理子は、もしそうなら古庄と両想いになる望みがなくなるので、気が気ではなく笑うどころではない。

 古庄が『ホモなどではない』と断言できる真琴だったが、それを話すとその根拠を尋ねられるだろう。理子の前で、古庄と結婚したなどと言えば、彼女を傷つけてしまう。

 重苦しい秘密を抱えて、真琴も到底笑える気分ではなかった。


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