恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
古庄は次の質問が口に衝いて出てきたが、口には出さずに机上にあったメモ用紙に走り書きして、真琴に渡した。
『俺とのこと、ご両親には話した?』
質問を目にして、パッと真琴は古庄へと視線を向けた。しかし、一瞬後には目を逸らして俯き、首を横に振った。
そして、一つため息をついてからペンをとって返事を書いた。
『すごく驚かせてしまうのが分かっているから、とても言い出せませんでした』
それでなくとも、真琴の年齢を考えて、親戚の間からも「結婚はしないのか?』という質問を頻繁にされている状況だ。
そんな中で、彼氏の影も匂わせていない真琴が突然結婚したことを告げたら、それこそ大騒ぎだ。
「そうか……」
古庄も、メモを見てため息と共に呟いた。もう一度、真面目な顔でメモを書いている。
『近いうちに、ちゃんとあいさつに行かなきゃいけないから、その時に一緒に報告するかな』
メモを受け取って、真琴はぎこちなく頷いた。そのぎこちなさは尾を引いて……、真琴の態度は再び先週と同じようなものに戻ってしまった。
――……しまった……。
学校で〝結婚〟の話をするのは、タブーみたいだ。それを真琴に意識させるとこうなってしまうということが、古庄にもやっと分かってきた。