恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
でも、それなら、学校でない所で話をしなければならない。そうしなければ、中途半端な今の状況は打開できない。しかし、今は仕事が忙しすぎて、その余裕がなかなか見つけられなかった。
それに、約束の一年が過ぎ、結婚までしたというのに、古庄はまだ真琴を抱き締めることさえできていない。
古庄はまず、結婚という強固なつながりを作って、それから細かいことを埋めていけばいいと思っていたのだが、なかなかその細かいことが埋められない。
住まいなどの物理的なことも、真琴との心の距離も…。
現状はずいぶん、古庄の計画とは違っていた。
「賀川先生、ちょっといいですか?」
声をかけられて真琴が振り向くと、そこには理子が立っていた。
とっさに手にあった古庄からのメモを丸めて、手の中に隠す。
理子はそんな真琴の不自然な素振りに気づくことなく、意識はすでに真琴の隣にいる古庄へと向かっている。
「一宮先生、なに?」
真琴に訊き直されて、理子は本題を思い出し、古庄から視線を移した。
「あの、特活部の先生たちが持ち回りでやっている放課後の見回りのことなんですが……」
「うん」
真琴と同様に、理子も特別活動の分掌に配属されていて、文化祭の準備期間中は放課後の見回りをすることになっていた。