恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「賀川先生が担当する日と、私が担当する日を換わってもらえませんか?」
そう言いながら、当番表がプリントされた用紙を指し示す。
当番は2人ずつ組まれていて、表に書かれている真琴の相手は古庄だった。
理由は訊かなくても解っている。理子は古庄と二人きりになりたいと思っている…。
忠実に、お姉さん先生たちのアドバイスを実行に移しているようだ。
小柄で華奢な理子は、目鼻立ちもくっきりと優しげに整っていて、男性ならば誰しも守ってあげたいと思ってしまうような可憐な女性だ。
フェロモンを漂わせて押せ押せムードの平沢のようなタイプはまだしも、こんな理子のようなタイプに想いを寄せられると、古庄だって心が動いてしまうかもしれない。
でも、古庄に理子を近づけたくないというよりも、理子の気持ちを後押しするような感じがして、真琴は気が進まなかった。
何と言っても、古庄は「既婚者」だ。
しかし、確たる理由も言えないのに断ると、理子を変に刺激しかねない…。
「うん。いいよ」
気が付くと、真琴はそう答えていた。理子の表情がパッと明るくなる。
「ありがとうございます!」
理子はそう言って頭を下げると、愛らしい満面の笑みを残して、自分の席へと戻って行った。