恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
文化祭の準備も佳境に入り、連日生徒たちは遅くまで残ってステージの練習やクラス展示の制作に励んでいる。
真琴のクラスの展示は、真琴が世界史の担当ということで「世界遺産」。
同じように古庄は地理の教師なので、彼のクラスの展示物は「世界の秘境」という、似たような内容だった。
ただ、古庄は今年、生徒会担当ということもあり、文化祭全体を指揮しなければならず、自分のクラスの方にまでなかなか手が回っていない。
古庄のクラスにも数学科の副担任がいるのだが、古庄のクラスの生徒たちは、真琴の方が詳しいと思うのだろう。展示の内容のことなど、古庄の代わりに真琴へといろいろと相談していた。
古庄がそれに気づいているのかは知らないし、真琴の忙しさは増すけれども、陰ながら古庄の役に立てているのがとても嬉しかった。古庄のクラスの生徒に慕われるのは、彼の分身に慕われるようでもっと嬉しかった。
それに、文化祭の時のように生き生きと生徒が活躍して、それに自分が力を貸せる時、真琴は本当に教師になってよかったと思うのだ。
真琴の毎日は、日々の業務や授業の準備と、この文化祭の作業に追われ、真琴の頭の中はこれらのことで埋め尽くされていた。
だから、心を少し曇らせる〝結婚〟のことは、学校にいる間は考えなくても済んだ。