恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



 放課後はほとんど、古庄と顔を合わせることがなかったので、真琴は古庄に帰りのあいさつもできずに〝自分の家〟へと帰った。

 本来ならば、自分は〝妻〟として食事の準備をして〝夫〟の帰りを待たなければならないのだろうと……、真琴は思う。

 けれども、帰宅して自分のためだけの簡単な食事を作り、それを食べてお風呂に入ると、あまりの疲れに、古庄のことを考える余裕もなく眠りに落ちてしまう。
 そして、また朝が来て、バタバタと準備をして出勤する…。

 今の自分にこの生活を変える余裕があるのか……。

 そんなことを思いながら、まぶしい9月の朝日に、真琴は目を細めて車に乗り込んだ。




 その日の準備に区切りをつけ、生徒を帰した後、夜の7時ごろになって真琴は職員室へと戻ってきた。


 理子と当番を入れ換わったので、これから校舎の見回りをするはずだ。
 真琴と組むことになっている立花という教員を探した。机のところへ行ってみると、きちんと片付けられ、カバンもなくなっている。



――ウソ……!立花先生、見回り忘れて帰っちゃったの?!


 一人で校内すべてを見回らねばならないのかと、真琴はめまいを感じた。



「ああ、賀川先生。そろそろ校内の見回りに行こうか」


 その時、背後から声をかけられた。



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