恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
真琴の胸を切なく痺れさせ、暖かさで包みこむこの声――。
振り向くとそこには、愛しい人が立っていた。
「…どうして、古庄先生?立花先生のはずなんですけど」
古庄は、真琴が理子と換わったのを知らない上に、日にちを間違えているのだろうか。
「いや、立花先生と換わってもらった」
「換わってもらった?」
「せっかく俺が賀川先生とペアになるようにしているのに、一宮先生と入れ換わってるから、俺も入れ換わった」
古庄は真琴の側まできて、小声でそう言った。ニッコリと笑う無邪気な笑顔に、真琴は絶句する。
そう言えば、見回りの当番表を作ったのは、誰でもない古庄だ。30過ぎの大人の男が、そんな生徒みたいな工作をするなんて…。
いろいろと画策をしているのは、理子だけではなかったらしい。
「こんなことでもしないと、一緒にいられないだろ?だから、去年は別々に回ったけど、今年は一緒に回ろう」
古庄の真意を知って、思わず真琴は赤面した。
言われてみれば、去年の見回りも古庄と一緒だった。けれども、静香への罪悪感と古庄への恋情との間で揺れ動いていた真琴は、古庄の傍にいるのが辛くて別々に回ることを提案した。
そしてその後、誰もいない暗い職員室で抱きしめられ、真琴は古庄の想いを受け入れた――。