恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
そんなことを思い出すと、ただの見回りなのに、真琴は古庄の隣にいることを突然意識し始めた。
懐中電灯を片手に、暗くなった校舎を照らして確認していく古庄を、傍らで見守る。そんな何でもない古庄の仕草でさえも、凛々しく感じられて、真琴の胸はキュンと絞られた。
もう一度、一年前の夜のように、古庄の腕に抱きしめられたくなってくる…。
けれども、ここは学校だと自分に言い聞かせて、真琴はそんな自分の中の欲求を振り払った。
――それに、古庄先生も入れ換わったって知ったら、一宮先生ガッカリするだろうし……。
理子が見回りをする明日になって、理子はこの事実を知るのだろうか…。そのことを思うと、真琴の胸がチクンと痛んだ。
渡り廊下から中庭を見下ろすと、まだ居残っている生徒の姿が見えた。真琴は窓を開けて、生徒たちに向かって声をかける。
「おーい!もう7時を過ぎたから、早く下校して。でも、片づけはちゃんとやってねー!」
「はぁーい!」
生徒たちは声をそろえて返事をする。それを聞いた真琴は、ニコリと笑って窓を閉めた。
少し歩を進めた古庄は、黙って真琴が追い付いてくるのを見守っていた。
真琴が傍らに来ると、古庄は柔らかく微笑む。