恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



「静香さんを不幸にしたら、絶対に許しません!」


 律儀で義理堅い真琴は、古庄が静香を裏切ることはもちろん、自分が裏切ることも決して許さなかった。


 それでも、古庄はどうしても真琴のことを、あきらめきれなかった。もう古庄の中で、真琴との未来以外は思い描けなかった。
 真琴との恋を成就する以前に、こんな気持ちで静香と結婚してもうまくいくはずないと、結婚式の直前になって婚約を解消した。

 結婚することをやめても、親友を傷つけてしまった古庄を、真琴は受け入れようとはしなかった。親友の婚約者だった古庄を、真琴自身、受け入れられるはずもなかった。



 そして……、あれは去年の九月のことだった。
 誰もいない電気の消えた職員室で、古庄は真琴を抱きしめた。真琴が迷惑に思うことは分かっていたけれど、自分の気持ちをどうしても抑えられなかった。

 すると、思いがけないことに、真琴は古庄の想いを受け入れてくれた。
 静香の婚約者が古庄だったと知る前から、ずっと真琴も想ってくれていたことを、このとき初めて真琴は告白してくれた。


「もう、逃げませんから」


 花のように微笑んでそう言って、古庄を抱きしめ返してくれた。

 絵に描いたようなハッピーエンド。そしてそれから、二人は晴れて恋人同士となり、新しい二人の物語が始まる……と思いきや、コトはそんなに簡単にはいかなかった。


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