恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
逆に、古庄からそう意味を含んで誘惑されたこともない。
初めて古庄から想いを打ち明けられた時まで、古庄もそんな素振りは見せなかったし、その時にはすでに、真琴は古庄のことをどうしようもなく好きになっていた。
古庄とのそんな出来事を思い出して、真琴は平沢の物言いに少し違和感を覚えた。
想いを通じ合わせることとは、平沢の言うように何かを獲得するゲームのようなものなのだろうか?
そして、大切な古庄のことを、ゲームに勝利して得る賞品みたいに言ってるようで、真琴は哀しいような怒りのようなモヤモヤした感情を抱えてしまった。
その時、離れた席に座っていた戸部が、真琴と平沢のところへやってきた。
古庄と同年代の戸部とは話しやすい間柄で、そのまま3人で話をしてもよかったのだが、これ以上平沢に嫌な気持ちを抱きたくない真琴は、戸部と入れ替わりで席を立った。
周りに誰もいない元の自分の席に戻って、飲み残していたサワーを口に含む。左腕の時計に目をやると、8時半になろうとしていた。
9時ごろにこの会もお開きになるだろうから、もう古庄は来ないかもしれない。そう思うと、真琴は今すぐにでも帰りたくなってきた。
「ああ、遅くなった。まだ食べる物残ってるかな?」
真琴の背後の襖が開いて、古庄が顔を出した。