恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
その顔を見た瞬間、真琴はホッとして安心する。そして、モヤモヤした気持ちがスッと和いでいくのが分かった。
「大丈夫です。なくならない内に、取っておきました。もう冷えてると思いますけど」
真琴が先ほど小皿に取り置きしていた料理を指し示すと、
「ありがとう」
と、古庄は嬉しそうにニッコリと笑って、それに応えてくれた。
優しげであまりに完璧なその笑顔に、胸がキュウンと切なく締め上げられて、真琴は思わず息をするのさえ忘れた。
当の古庄は、自分がそんな完璧な容貌を備えていることなどに頓着することもなく、注文した飲み物が来るのも待たずに、真琴の隣で料理をがっつき始めた。よほどお腹が空いていたらしい。
こんな古庄をとても微笑ましく感じて、真琴は自然と柔らかな笑みをたたえられた。
「ずいぶん遅くなりましたね。文化祭の準備で、何か問題でもありましたか?」
無心に食べている古庄に、脇から真琴が話しかける。
古庄は今食べている物を噛み下しながら、首を上下させた。それから、真琴のサワーに手を伸ばし、それを一口飲んでから口を開く。
「うん。執行部と実行委員が中心でやってるモザイク画なんだけど、紙で作ってても大きいから思ったより重くてね。それで、吊り下げ方をいろいろと試行錯誤してて……」