恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
周りにいる10人ほどの同僚一同、この平沢の露骨な行動に唖然とした。こういうことに鈍感な古庄でも、さすがにこれは普通じゃないと感じ取る。
ほぼ正面にいる真琴の様子をうかがうと、じっと平沢の行動を観察していた。興味津々の他の教員の顔つきとは違い、真琴の表情からは何の感情も読み取れず、当然のことながらその顔は笑っていない。
その顔を見た途端、古庄の背中に冷たいものが滑り落ちた。
古庄は平沢の隣から逃れようとしたが、平沢に腕をしっかりと握られていて、立ち上がることもできない。平沢の一方的な話を聞きながら、まんじりと目の前に出された水割りを、握られていない方の手で口に運ぶことしかできなかった。
周りの教員たちは、しばらくすると古庄と平沢には興味を示さなくなり、二人のことは放っておいて、自分たちの会話を楽しみ始めた。
「こんばんは……」
細い声のあいさつが聞こえ、そこで姿を現したのは理子だ。細部まで計算されたフェミニンな服に身を包み、ハッとするほど可愛らしさで、理子はそこに立っていた。
一年部の理子が二年部の飲み会に駆けつけて来るのは、いささか不自然なのだが、誰かに場所を教えてもらったのだろう。
一同、特に男性教員は、若く可愛らしい理子の登場に沸いた。理子のためにソファーの場所を空けて、嬉々として迎え入れる。