恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
 


 理子は古庄の隣を確保したはいいが、完全に平沢が自分の世界を作っているので、その会話に入り込む隙を見つけられない。
 何とか古庄の気を引こうと、水割りの残り少なくなった古庄のグラスに、新たに水割りを作って、古庄に手渡す。


「…あ、ありがとう」


 古庄が理子の方を見て礼を言うと、途端に平沢の顔付きが変わった。そして、平沢は誘惑のギアを切り替える。


「あたし、実はすごいお祖父ちゃん子だったんです。お祖父ちゃんは、古庄先生みたいに優しくてカッコいい人でした。すごくあたしを可愛がってくれて、あたし、お祖父ちゃんみたいな人と結婚したいなぁって思ってました」


「はぁ…」


 また始まってしまった平沢の、あまりにもつまらなさそうな身の上話に、古庄はうんざりして適当に生返事をする。


「あたしが困った時は、いつも助けてくれて、例えばあたしが彼氏と喧嘩したりした時とかも、何でもお祖父ちゃんは相談に乗ってくれてたんですけど……。昨年そのお祖父ちゃんは亡くなってしまいました……」


 と、いきなり平沢はしんみりした話をし始めたので、古庄も神妙な顔つきになり、聞き流すわけにはいかなくなった。


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