恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
 
 

「……その人に、浮気されてしまったんです。本当に心から好きな人だったんですけど、気持ちがすれ違って別れてしまいました……。でも……、いくら彼氏に捨てられても、母の病気さえ良くなってくれれば……。あたしを育ててくれた両親のために、あたしが役に立てたのなら、それで良かったんですよね……」


 言葉をとぎれとぎれに発しながら、平沢は涙をぽろぽろと零し始めた。背中を震わせて、嗚咽も加わってくる。そして、スッと古庄の肩へと頭を預けて、慰められる体勢を作った。


 古庄は思わず体を硬くした。しかし、泣いている平沢を、無下に押し退けることもできない。
 真琴の視線を感じて身のすくむ思いだったが、そのままじっとして泣き止むのを待つしかなかった。


 真琴よりも苦い表情で睨んでいたのは、理子の方だ。理子は、どうにかして古庄を平沢から引き離そうと思いを巡らせていたけれど、平沢の方が一枚上手だった。


「あの時…、お祖父ちゃんがいてくれて、相談に乗ってくれてたら、あの人の心は離れていかなかったかもしれません……。お祖父ちゃんは、あたしの心の支えでした。……古庄先生は、あたしのお祖父ちゃんに似ています。……あたしの理想の男性です……」


 涙声で切々とそう語りながら、平沢はおもむろに古庄の首に腕を回した。そして――。



――……あっ……!!!



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