恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



 周りで様子をうかがっていた一同は、息を呑んだ。

 平沢が古庄の首を引き寄せて、その唇にそっと口づけている。


 当の古庄が目を剥いて硬直しているのと同じように、真琴の体も心も固まってしまった。ただ汗ばむ手のひらで、無意識に膝のところのスカートを、ギュッと固く握りしめていた。

 今、真琴の目の前で起こってしまった出来事を、自分の中で処理するのには時間を要するかに思われた。

 しかし、その硬直は、思ってもみない形で破られる。


 理子が立ち上がったと同時に、平沢の肩を押して古庄から引き離し、


パッチ――――ン!!


と、平沢に一発平手打ちを見舞った。



「何やってんのよ!!この…ハレンチ女!アバズレ!色情魔!場所と立場を考えなさいよ!!あんたなんか…!」


 と言ったところで理子は、皆の注目が平沢ではなく、自分に集まっていることに気がついた。


 清楚で可憐な理子から発せられたとは思えない、この激しい言葉に、一同は唖然として黙り込む。カウンターに座っていた同僚たちも、驚いたように振り向いている。

 平沢は、叩かれた頬を手で押さえて、ますます涙を溢れさせた。


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