恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



「…まぁ、一宮ちゃん。平沢先生もかなり酔ってるみたいだし、古庄くんだって大人だしファーストキスってわけでもないんだから、大目に見てやったら?」


 石井にそう言われて、理子は自分がしでかした幼稚な行為に気がついて、顔に血が上った。


「……私……」


 理子は何を言いかけたのか、その後は言葉にならず、いたたまれなくなり、そのままその場から駆け出した。


 真琴は呆然と、理子の一連の動きをただ目で追っていたが、店のドアに付けられたベルが鳴り、理子が出て行ったことに気がついて、とっさに席を立った。
 残されていた理子のバッグと自分の物を抱えて、後を追う。


 まだ、遠くには行っていないはずだ。きっとどこかで泣いているに違いない。弱みにつけ込まれて、悪い男に絡まれたりしたら…と心配しながら、真琴は酔っ払いがそぞろ歩く、賑やかなネオンの街をあちこち見回して、理子を探した。



「賀川先生!」


 背後から声をかけられ、振り向くと、古庄が追いかけて来ていた。


 古庄の顔を見ると、先ほどの衝撃的な光景を思い出してしまうので、今は放っておいてほしかった。早く忘れ去るために、焼きついたあの像を網膜ごと削り取ってしまいたいくらいだった。


 
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