恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
真琴は返事もせず、顔を背けて、再び理子を探し始める。
真琴のこの態度を、古庄は怒っていると思ったらしく、
「賀川先生!!」
近くまで来て、もう一度真琴を呼んだ。
しかし、今度は至近距離にもかかわらず、真琴は振り向きもしなかった。古庄の眉間に、皺がよる。
「……真琴!!」
そう呼ばれた瞬間、真琴の体が跳ね上がった。
古庄のその一言は、真琴の心臓を撃ち抜いて痺れさせた。思わず立ち止まって、ゆっくりと振り返る。
「一宮先生を探さないと…」
追いついて来た古庄に、真琴は顔を背けたまま、一言つぶやいた。
「一宮先生よりも、まず君だ。……説明させてくれ」
真琴の側に立った古庄が、静かに懇願した。
真琴の心をなだめようとしたその言葉を聞いた途端、逆に真琴の胸には言いようのない感情が渦巻いて、泣きたくないのに涙がこみ上げてきた。
そもそも、自分の好きな人が、ましてや自分の夫が、他の女性とキスをしてしまったのだ。理子のように逆上することはなかったが、真琴がショックを受けているのには違いなかった。
「……目の前で一部始終を見てたんだから、私に説明する必要なんてありません」