恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
「おはようございます」
古庄への想いがこみ上げてきて、その切なさと、古庄への申し訳なさに、真琴はまた泣きそうになった。
辛うじてあいさつをし、涙を抑えるために作り笑いを古庄に向けた。
古庄を気遣って作った真琴の健気な笑顔は、却って古庄の心をズキンと突き上げた。
真琴のどんな表情も知り尽くしている古庄にとって、真琴が無理をして笑っていることは、すぐに見破ることができた。
――愛しい人にあんな顔をさせてしまった……。
それは、泣き顔を見せられるよりも、古庄にとって辛いことだった。
この週末、真琴ときちんと話をしようと、何度も古庄は思った。
あのスナックでの平沢とのことについて、そしてこれからの結婚生活のことについて。
けれども、日中は部活と文化祭の準備に追われて、なかなか時間を確保できなかった。
夜になって帰宅した後も…、あんなに待ち望んだ一緒に過ごす夜だったけれども、結局古庄は真琴に連絡をしなかった。
それほど、あの真琴の一言が心に響いて……、怖くてどうにも動きが取れなかった。
一瞬で女性の心を虜にできる古庄も、心から惚れている真琴が相手では、ただの臆病な男にすぎなかった。
「……おはようございます」
真琴とは反対方向から、甘ったるい声で古庄に声がかけられる。