恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
床を白くし、ラップフィルムなどで光の反射などを上手く表現している。壁には模造紙を貼り、絵を描いただけなのに、よほど絵の上手い生徒がいるのだろう、本当に遠く地平線を見渡しているような気持ちになった。
そして、さらに誘われて一旦教室を出て、別の入り口から入ってみると、今度は赤茶の世界が広がる。
段ボールを使って表現された縞模様の波が折り重なったような空間。
「〝The Wave 〟っていう、アメリカにある一日に二十人しか行けない秘境なんです」
と言って、生徒の一人が素材となった写真を見せてくれた。
数時間でここまでのものを作り上げる、生徒たちの力量に、真琴は目を見張った。
「古庄先生がほとんど手伝えなかったのに、生徒たちだけでよく頑張ったねぇ」
真琴が感嘆と共にそう言うと、古庄のクラスの生徒たちは、口をそろえて言ってくれた。
「その代わり、賀川先生が手伝ってくれたじゃん!」
「実際、古庄先生より頼りになったし!」
と、笑い合いながらの言葉に、真琴は本当に嬉しくなってくる。
生徒自身にそう言ってもらえたことはもちろん、その生徒を介して、古庄の役に立てているように思われて、それだけで真琴の心は、温かいもので満たされてくるように感じられた。