恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
生徒たちからそう言われて、古庄は教室を見回して息を呑んだ。
「おお!これは、〝The Wave〟だな!すごいじゃないか!!」
さすがに地理教師で博識の古庄は、一目で教室内に再現された風景を言い当てた。
生徒たちの頑張りを労うように、古庄は生徒一人一人の頭や肩に手を置いて、自分の周りの人垣を解いてくれるように促した。そして、心配そうに側で待っている真琴に、ようやく向き直る。
「大変なことって?」
「うん。行きながら説明する。ちょっと俺も困ってしまって……」
と、古庄は真琴の問いに答えながら、その背中を押して教室を出た。
足速に歩きながら、古庄は事の顛末を真琴に話し始める。
「さっき例のモザイク画を特別教室棟の屋上から吊り下げてみたんだけど、その時に失敗してね。絵の4分の1が破れて落ちてしまった。しかも、下で書道部の子達が書道パフォーマンスの準備をしてて……」
「……書道部って、まさか……」
話を聞きながら、真琴は状況を想像して顔を青ざめさせた。
「落ちた部分は、墨汁がべっちょりだ……」
古庄も険しい顔をして、真琴の推測を裏付けた。
とにかく、現状を確認しなければならない。真琴は古庄と並んで、事件の現場へと急いだ。