恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



 文化祭実行委員と生徒会執行部員たちが、その数千枚を回収し、一枚一枚正確な位置に貼り合わせていって、モザイク画はようやく出来上がったばかりだった。

 約3mの竹竿を5本ほどを使って、モザイク画は吊り下げることになっていたらしいが、古庄が言っていたように、吊り下げる際、竹竿の端の1本を、手を滑らせて落としてしまったらしい。
 モザイク画をビリビリと引き裂きながら竹竿は落ち、破れ落ちた部分は墨で真っ黒になったり、墨が飛び散って細かなモザイク模様を消してしまっている。


 特別教室棟の1階の空き教室に引き入れられたモザイク画の状態を、息を殺すようにして真琴が確認する。絵の周りにいる生徒たちは、一様にして消沈した面持ちだ。


「下にいた生徒に怪我がなかったのは、不幸中の幸いでしたね……」


 と、とりあえず言ってみたものの、真琴自身も古庄と同じで、どうしたらいいのか分からない。

 古庄の様子をうかがうと、腰に手を当て、モザイク画の裂けたところを見下ろしている。その表情は、やるせなく悲痛なものだった。

 夏休み前から、このモザイク画のために、どれだけ古庄が尽力してきたか知っている真琴は、胸が痛くなり目の奥が熱くなってくる。



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