恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜



 けれども、今古庄のためにしなければならないことは、一緒に悲しむことではない――。
 それに気がつくと、真琴は心を決して顔を上げた。


「……あなたたちは、どうしたいの?もうモザイク画は展示しない?それとも、無事な部分だけ展示する?それとも……」


 真琴はそう言いながら、モザイク画を囲む実行委員と執行部員の顔を、一人一人見渡した。


「……どっちも嫌です」


「全校生徒に手伝ってもらってるのに、展示しないわけにいきません」


「無事な部分だけだと、絵として完成しないし……」


「破れてない、汚れてない絵を展示したいです!」


「そうです!完成していた完璧な絵を、皆に見てもらいたいです!!」


 生徒たちは、口々に自分の思いを語った。


「……そう。だったら、どうしなければいけないの?こんなふうに途方に暮れてる暇はないと思うけど」


 にっこり笑って真琴がそう言うと、にわかに生徒たちの顔色が変わり始めた。


「今からやり直しても、間に合うでしょうか?」


 と言ったのは、教室の隅でうずくまっていた文化祭の実行委員長だ。皆の視線が、彼に集まる。彼が、手を滑らせて竹竿を落としてしまった張本人だった。



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