恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜
それから、生徒たちと教員たち、総勢二十数名で黙々と作業を続けた。さすがの平沢も、今回ばかりは空気を読んでいるのか、古庄から遠く離れた教室の隅で作業にあたっている。
作業に没頭しながらも、真琴は理子に気付いてもらいたかった。古庄にどう思われているかにこだわるよりも、生徒たちと一緒に何かを成し遂げることが、とても素晴らしいということを。
それに気付けたら、理子はもっとずっと教師として成長できる……。真琴は生徒を思うような気持ちで、理子のことを見守っていた。
色が塗られた短冊は集められて、大きな模造紙の台紙に貼られていく。黙々とした空気の中、時折古庄の声が響いて、台紙に貼る作業を手伝っているらしかった。
顔を上げて確認したわけではないが、真琴には古庄がどこで何をしているのか、その目で見ているかのように分かってしまう。空気を伝わってくる、彼が発する波動のようなものを感じ取って。
そして、そこに古庄がいると分かるだけで、真琴の心は切なく震えるのと同時に、安らかに和いでくる。
けれども、それから真琴は目の前のやるべきことに無心になり、古庄の存在さえも意識から消えた。少しでも早くモザイク画を完成させて、生徒たちを延いては古庄を安心させてあげたい……。ただ、それだけだった。