恋はしょうがない。〜職員室の秘密〜

心の支え

 
 

 その時、誰かの携帯電話の着信音が鳴り、真琴に声をかけられて手伝いに来ていた特活主任が席を立った。


「申し訳ない。古庄さん。もう帰ってもいいかな?うちのカミさん、夕食が遅くなるとうるさいんだ」


 教室に戻ってくるなり、特活主任はそう言って謝った。


「いえ、とんでもない。どうぞ、お帰り下さい。来てくれて助かりました」


 古庄がそう答えるのを聞きながら、真琴も教室の時計に目をやる。時刻はすでに午後7時を過ぎていた。


「よし!じゃあ、ここでいったん切ろう。女子はここまでだ。遅くなると危ないから、すぐに帰ること。先生方も、ありがとうございました。もう管理棟が閉まってしまうので、お帰り下さい」


 古庄は潔く決断し、張りのある声で指示を出した。
 そうは言うものの、まだまだ作業は進んでいない。まだ修復が必要な部分の半分程度しか終わっていないので、帰れと言われても、皆なかなか立ち去りがたかった。


「分かりました。それじゃ、帰ります。管理棟が閉まるから、急ぎましょう」


 そう言って立ち上がり、片づけを始めたのは真琴だ。真琴が他の教員たちをせかすように動き始めると、皆もそれに倣って帰る準備をし始めた。



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