あなたには見えますか…………
カオルの住む家に着くと、俺は呼鈴を押

していた。

すぐに、カオルが玄関から飛び出すよう

に出て来ると、俺にしがみついていたん

だ。



カオルの普段の気の強さからは、想像も

出来ないほど、心が弱りくじけそうにな

っていたのだろう。



「カオル……」



「ヒデ……もう私どうしたらいいか分から

ないよ……どうして、二人が巻き込まれな

くちゃいけなかったの……」



俺は答えの分からない、カオルの問いに

何も答えることが出来ずにいたんだ。



「カオル、このままじゃ時間だけが過ぎ

て行くだけだよな。

行こう。マキちゃんの父親の所に。

俺はその少女を許したくないから。

それにこのまま、また満月の夜が来るの

を恐怖に怯えたくない……

もし、次にカオルが被害に合うようなこ

とがあれば……

俺……生きて行けないから……」




俺はカオルの返事も待たずに、カオルの

手を取り歩き出していた。


< 103 / 187 >

この作品をシェア

pagetop