あなたには見えますか…………
俺たちがお寺の中に入ると、マキちゃん

の父親は、木箱を俺たちの前に静かに置

き、蓋を開いて見せていた。



「これって……」



俺がそう呟くと、カオルが話し出しはじ

めていたんだ。



「以前、話してくれた供養しているとい

う草履……ですか、おじさん……?」



「あぁ。この草履を永年供養をし、少女

の悲しみを和らげようとしていたのだが

どうも、少女には届いていないようだ……

私が思う以上に、もっともっと深い闇の

苦しみや憎しみがあるのだろう……

オサムくんから聞いた話や、マキの部屋

で見た光景では、そう思わざるを得ない

んだ……

しかし、今となっては……

昔の当事者がいるのかもわからず、真相

は闇の中になってしまっているからね……

それに……」



そこで、マキちゃんの父親は、悲しい顔

をし、言葉を遮ったあと、一呼吸置いて

話を続けてくれていた。



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