あなたには見えますか…………
「お爺さん、大丈夫ですか?

少し横になられたほうが……」



母親がお爺ちゃんの腕を支えながら話し

ていたんだ。



「あぁ、そうさしてもらうかな……

秀弘、もしも当時のそのまま廃墟が残っ

ておったとしても……中に入り、押し入れ

は開けてはならんぞ……」



「あぁ。わかった。お爺ちゃんごめんな

無理しないで……」



お爺ちゃんが自室に戻って行くのを、確

認すると父親が、俺に話し掛けてきてい

た。



「秀弘……マキちゃんのことは、残念だっ

たな……オサムくんに続いてこんな事が起

きるとは……

それにもし、昔のその屋敷があったとし

ても、お前は無茶な事だけはやめてくれ

よ……

お爺ちゃんの言うように、勝手に押し入

れを開けたりせんようにな」



「わかってる……」



俺は、そう呟くと自分の部屋へと、うつ

むいたまま戻って行ったんだ……

こんな悲しく辛い会話を、家族とするな

んて今まで考えた事がなかったから……




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