あなたには見えますか…………
お寺の近辺まで辿り着くと、周りには竹

林が高くそびえていた。

一度もまだその中には、入ったことがな

い俺は、入口を探すだけでも一苦労だっ

たんだ。



しばらく辺りを探していると、やっと人

が一人入れるような細い道を、見つける

事が出来ていた。



草を掻き分け中に入ると、そこは光があ

まり入らなくなっており、夏の暑さすら

感じない、ひんやりとした空気が出迎え

てくれていたんだ。



その感覚に俺は、快適さよりも背筋が凍

るような錯覚にさえ、なっていたんだよ

な。



道は一本道で、左右には高く高くそびえ

る竹が生い茂り、どこからとなく吹き抜

ける風が笹を揺らし、カサカサと音を立

てている。



俺は、そのなんでもない光景にすら恐怖

を覚えながらも、一歩ずつ前に進んでい

ったんだ。






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