あなたには見えますか…………
俺はゆっくりと足を前に進め、大きな敷

地の外周を一周すると、再び玄関先に辿

り着いていた。



数センチだけ開いているその玄関のドア

の内部を、おそるおそる片目で覗き込む

ものの、中は光が入っておらず黒き世界

だけが見えるだけである。



しばらくの間、その大きな玄関と睨み合

った末、俺は玄関の取手に手を掛けたん

だ。



しかし、ピクリともドアは動く事はなく

ただギシギシと音をこの一帯に響かすだ

けである。



長年の劣化により、立て付けが悪くなっ

たのだろうか、まるで外部の者を拒むか

のごとく、玄関からは中には入れそうに

なかったんだ。



< 129 / 187 >

この作品をシェア

pagetop