あなたには見えますか…………
俺は冷静さを失っていたのだろう。

こんな場所に一人いるのだから、それも

当然かもしれない。



たとえ、この目の前にある屋敷に入れた

ところで、この屋敷の中にその少女がま

だ存在する押し入れがあるとは、限らな

いのだ。

数ある他の屋敷かもしれない。



俺は動く事はなくなったドアから少し後

ずさると、周りにも存在する主なき屋敷

を見渡していた。



「いったい……俺は、どうすればいいんだ

よ……」



俺は荒廃しきった辺りを見渡しながら、

何をしたらよいのかも分からなくなり、

ただ立ち尽くしていたんだ。



その間も、動く事はなくなったこの一帯

を、時間だけが当たり前のように、時を

刻んで行く。






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