あなたには見えますか…………
この寂れた一帯の村で立ち尽くす俺は、

まるでこの世に、ただ一人だけ取り残さ

れたような感覚に陥っていた。



そんな俺の不安を悟ったように、風の吹

く音がまるで人声のように、俺の周りを

泣き吹くんだ。



俺がその虚しい風の音を聞いている時、

足元に何かが当たる感触があった。




風で飛ばされて来たのだろうか。

見慣れぬ球が、足元にはあるんだ。



俺がしばらく見てから拾い上げると、そ

れは本か何かで見たことのある、手鞠だ

と理解できた。



「なんで……こんなものが……」




俺が呟いた、その時だった。



今までの風の吹く音に混じり、明らかに

違う音が聞こえて来たんだ。



遠い場所から、しかし脳に直接聞こえる

ような音が……






「イヒヒヒヒヒヒヒヒ……アハハハハハハハハハハハハハハハ」





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