あなたには見えますか…………
俺は、立ち上がり逃げる事も出来ずにい

たんだ。



恐怖のあまり、先ほど拾い上げた手鞠を

握り締めながら目を閉じ、座ったまま体

を丸めていた時間が、どれ程過ぎたのだ

ろう。



周りの景色は色褪せて行き、辺りは薄暗

くなってきていた。



俺は、パニックになりそうな感情を押さ

え、ゆっくりと這いながら、近くの屋敷

の外壁に手を掛けて体を起こしていった

んだ。



さっきまで聞こえていた笑い声は、いつ

の間にか静かになっており、辺りはまた

孤独な世界へと戻っていた。



俺は、さっきまで声が聞こえていた方向

に目をおそるおそる向けると、そこには

周りの屋敷よりも広い敷地の古びた屋敷

が見えていたんだ。




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