あなたには見えますか…………
ジリジリと前に移動しながら、倒れ落ち

ている木製のドアを避けて、玄関前にや

っとの思いで辿り着いていた。



俺は、数ある玩具の中にその手鞠を置く

と、目の先にある暗い敷地内の廊下を、

目を細めながら確認していた。



徐々に目が暗闇に慣れてくるに従い、内

部の様が分かり出してくる。

部屋の扉は傾き、障子が無惨に倒れてい

る。そして床には、外部から飛んできた

であろう落ち葉などが、無数に入り込ん

でいる様が目には映るんだ。



無造作に転がる玩具類や飲み物の器など

はきっと、御供え物に違いない……

あの少女がこの屋敷で亡くなったんだ……


俺は、頭の中にまだ見ぬ少女の姿を思い

浮かべていた。



しかし、俺に出来ることは場所を確認す

る事しか出来ないんだ……



この事をマキちゃんの父親に話そうと、

俺はゆっくりと振り向き、帰ろうとし

た時、耳に震えるような声が聞こえてい

た。




「たす……けて……」



聞き間違いだと思ったその音は、俺の耳

に何度も何度も聞こえてくる……





「たす……けて……たす……けて……」



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