あなたには見えますか…………
涙は出るが、声が出ない。

あまりにも痛烈な恐怖に、体は硬直した

ままであった。



「たす……けて……たす……けて……」



しかし、脳に直接届く声が鳴りやまない

のだ。



俺が横たわる真横には、押し入れが存在

し、その中から声が聞こえてくる。



「ねぇ、たすけて……おねがい……

たすけてよ…………早く…………

はやく……あけろよ。

はやく、しろ……

はやくあけろぉ!」



それは、助けを呼ぶ弱い声から、怒りに

変わって行くのだ。



全ての者を……命ある者を恨み妬むような

声で。



俺はそのまま横になりながら、意識が飛

んでしまったのだ。



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