あなたには見えますか…………
カオルが秀弘の携帯電話に連絡を入れる

が、秀弘には繋がる事はなかったのだ。



不安と焦りにより、ソワソワとした感覚

になるものの、連絡のつかないことに、

カオルは秀弘の身を案じるしか出来ない

のである。



「お願いだから……ヒデ……お願いだから

無事でいてよ……

私を一人にしないでよ……

早く……早く連絡して……」



祈るような呟きも、カオルの携帯電話に

は秀弘からの連絡は、来ることはない。



秀弘の自宅でもまた、秀弘からの連絡は

来ておらず、父親が秀弘を探しに出ると

ころであった。



「少し辺りを探してくる……

爺さんは、夜も遅いから自宅にいてくれ

な……

秀弘が帰ってきたら、俺の携帯に電話し

てくれ……」



「お父さん……お願いね……」



母親の言葉に黙って頷くと、父親は懐中

電灯を片手に家から、月明かりの照す夜

道へと出ていったのである。



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