あなたには見えますか…………
父親が辺りを探すものの、秀弘の姿を見

ることはできなかった。



そして昨日聞いた竹林へと、足を運び出

していたのである。



お寺の裏手まで来たが、父親も入ったこ

とのない竹林なだけに、入口が暗闇によ

り更に分からずにいたのだ。



がむしゃらに草木を掻き分け、竹林内部

を覗き込むものの、歩けるような道はな

く、光無き世界が父親の前には広がって

いるばかりであった。



「爺さんの言う通りだ……こんな場所には

朝からずっといるわけがないだろう……」



そう呟くと、秀弘の父親は、場所を移動

しながら、秀弘をまた探し始め出してい

た。



その頃、時刻は日付が変わろうとしてい

たのである。



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