あなたには見えますか…………
父親が自宅に戻ってきたのは、深夜一時

を回っている。



その姿を見た母親が駆け寄り近づいてき

ていたのだ。



「お父さん……秀弘は……?」



「探して回ったが、見つからなかった。

携帯の充電が落ちたまま、友達の家に泊

まりに行ってるのかもしれん。

また明るい朝から探してみる……」



うつむきながら話す父親の表情が、そこ

にはあった。



「秀弘の部屋の押し入れは閉まったまま

だったの……だから最近、秀弘がよく話し

ているような事は、していないと思うの

だけど……」



「そうか……よかった……

なら、きっと大丈夫……

そう信じよう……」



その頃、秀弘の祖父もまた自室で、思い

悩み、悲しみに満ちた表情をしていたの

である。



昔に、頭の片隅に追い込み蓋をした記憶

の箱をゆっくり開きながら。



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