あなたには見えますか…………
「行こうか、ヒデ」



そう呟くカオルは、優しく車椅子を押し

てくれている。



父親の車に座ることも、困難になり皆の


力を借りて座席に座り込む。



この先数ヵ月は、何をするにもこのよう

に不自由な生活になるのだ。



しかし、家族がいるから。

愛する者がいるから、俺は支えていって

もらえる。



俺は父親の運転する車の中で、窓ガラス

に、見えては消える景色を見ながら、悔

しさで涙が流れ落ちていた。



そして、弱虫でも逃げたと言われても構

わない。



あの少女の事に関わる事をやめようと、

その時には考えていたのだ。



これ以上、皆に更なる迷惑をかけたくな

かった……



心の中で、オサムとマキちゃんに詫びな

がら……



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