あなたには見えますか…………
カオルもまた黙って、先生の話を聞いて

いる姿が見えているんだ。



いつもなら、朝から騒ぎ立てるオサムの

いない教室には、まるで料理のない食卓

のような不自然さを感じる。



この教室にはいつものような、当たり前

にあるものがないんだ。

それは、哀しみや虚しさを伴う。


雅子もまた、同じ気持ちだったのだろう

か。



閉じ込められ、食事も出来ず、当たり前

に見る景色も閉ざされ、ただ悲しみに暮

れた日々を送っていたまま、死んでしま

ったのだろうか。



俺は憎むべき相手にも関わらず、そうい

った虚しさもまた、哀れに感じてしまっ

ていたんだ。






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