あなたには見えますか…………
カオルは授業開始のチャイムと共に、そ

の言葉を言い残したまま、席に戻って行

ったんだ。



そのカオルの言葉を聞いて、俺はまたあ

の屋敷の光景を思い出していた。

もう、二度と近寄りたくない場所の光景

を。



俺は、この事件から逃げ、マキちゃんの

父親にも雅子の居場所は、伝えてはいな

かった。



もう、何もかも忘れてしまいたい気持ち

が、強く心にあるのは事実だから。



逃げるのは簡単だ。



しかし、それに立ち向かうには大きな力

がいる。



その力を勇気と言うのなら、俺はその心

を置き忘れて来たのかもしれない。




あの雅子のいる屋敷に……



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