あなたには見えますか…………
ゆっくりと丁寧に全てを剥がし終えたオ

サムは、両手で押し入れを強く押さえて

いた。



夏場の熱帯夜に加え、恐怖からの冷や汗

も流れ落ちて行く。



「大丈夫……大丈夫だよな……

もうこんな生活なんてやめたいんだ……

大丈夫、大丈夫……

いるわけない……

それに、声も聞こえてない……

そうだ……声は前みたいに聞こえてないじ

ゃないか!

大丈夫だ! もう大丈夫だ!」



そう強く自分に言い聞かすと、オサムは

勢いよく押し入れを開けた。








その押し入れの中には、小さな女の子が

オサムの目をジッと見つめたまま、ゆっ

くりと口を開いた。








「もっと早く開けろよ……」










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