あなたには見えますか…………
俺は、カオルの手を強く握りながら、言

葉に出来ないでいる感情を噛み締めなが

ら歩いて行くしかなかった。



そう。ただ無言で一歩一歩進むしか。




カオルの自宅前に着くと、カオルが消え

入りそうな声で話してくれている。



「ありがとう……ヒデ……ありがとう……」



「分かってると思うけど……今日は押し入

れなんて触ったらダメだからな……」



「分かってる……ありがとう……

ヒデも押し入れは触らないで……

絶対だよ……」



「あぁ。約束する。大丈夫……また連絡す

るから……」



家の中にゆっくりと入って行くカオルを

見届けると、俺はふらつく足を必死に耐

えながら自宅へと帰って行った。



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