あなたには見えますか…………
その頃、ヒデは精神的に衰弱はしていた

ものの、カオルの事が気になり電話をか

けていたのだ。



そして、ヒデ本人もカオルの声を聞いて

安心したかったのであろう。



「もしもし……カオル?

大丈夫か……?」



「ありがとう……ヒデ……

辛いのに電話くれて……」



「カオルこそ辛いだろうに……

さっきも約束したけど、押し入れは開

けるなよ……」



「分かってるよ……オサムみたいに引き摺

り込まれてしまうんだよね……

この満月の夜は……

ねえ……オサムは、もう帰ってこれないの

かな……

やだよ……仲間がいなくなるのは……」



「分からない……でも今まで帰って来た人

は……いないから……」



「そうだよね……今頃……マキは泣いてる

んだろうね……」



「あぁ……明日、様子を見に行こうか……

マキちゃんの所にさ……」



「そうだね……私たち以上に苦しいはずだ

から、マキは……恋人を失って……」




二人はまだ、知るよしもなかったのであ

る。



マキはもう、いない現実を。



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