ミクロコスモス
「折り畳み傘なら、持っているよ」


とりあえず、丁寧にもう一度言ってみる。

けれど少女は首を振るだけ。


さらさらと、短い黒髪が揺れる。



漆黒の瞳は、深い憐憫をたたえていて。


なんだか無性に不安になった。





なんだ?

なんなんだよ、一体。



雨が降るって、どういうことなんだ?


どうして、傘を持ってないことになるんだ?





目の前の少女は、何を知っていて、一体何者なんだ?










『私は大抵のことは知っているよ。

・・・というか、分かっちゃうんだ。』



不意に、あの人の言葉が蘇った。




分かってしまう。

大抵のことを。



この少女もそうなのだろうか?




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