ミクロコスモス
あの人と、とてもよく似た雰囲気を纏う、この少女も?


あまりにあどけなく幼い、この少女も?






「持っていないの」


少女は、独り言のように呟き、真っ直ぐな漆黒の瞳をこちらに向けた。




「それだと、濡れてしまうの」



言い聞かせるように。

けれど、どこまでも哀愁ただよう声で。




「濡れちゃうんだよ。」


少女は繰り返す。

真っ直ぐにこちらを見据えたまま。




「濡れてしまうから、あなたの持っている傘は意味ないの。

傘なんかじゃないの。」






確信に満ちた声。



心が揺れる。

ぐらんぐらんに、振り子のように。


不安で、不安で。


何か間違いをおかしてしまったような、そんな気分になって。



叫びだしたくなった。




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