ミクロコスモス
突如襲ってきた激しい不安。


それに必死に耐えていると、少女は労わるような顔のまま、再度口を開いた。





「可哀想に」


それは、ひどく、大人びた声だった。

確信に満ちた、同情的な声。



少女は、それだけ言うと、何にも無かったかのように。

歩き始めた。





『可哀想に』?



何がだ?


不安に翻弄されていること?

それとも、傘がないこと?





「・・・・・ちゃんと、説明、してくれないかな?」


あやふやで曖昧で、意味がつかめない言葉達に、もう我慢できなかった。



ちゃんと、教えて。

じゃないともう、頭が、心が、パンクしてしまいそう。




少女はふっと振り返る。


「すぐにわかるよ。」




何の感情も読み取れない、平坦な声だった。





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