ミクロコスモス
その胸の痛みを無視し、俺は二カッと笑う。




「お嬢さん美しいから、その果実お安くしとくよ!

どうだい?最後の一個だよ?」



朗らかな口調で言い募れば、娘は一瞬キョトンとした後、ふわりと笑った。

柔らかな微笑みに、本能的に胸が高鳴る。



なんて。

なんて可憐な微笑。







「あら、面白い冗談ですね」


ふふふと可憐に笑いながら、娘は楽しそうに言う





その言葉に俺は、内心首を傾げた。


高鳴る鼓動を感じながらも、考える。



なぜ、冗談などと言う?

俺は商人なのに。



商人が売り物を買ってもらうために安くするなどと言うのは、いたって普通のことなのに。

あんなにも褒めていたのなら尚更。





それでも娘はふふふと可憐に、実におかしそうに笑う。


思わず魅入られてしまうほどの笑みを浮かべながら、娘は口を開く。






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