年下オトコたちの誘惑【完】
「ほら、言っちまえよ。好きだ、って」

そんなこと、簡単に言わないでよ…。

わたしが目線を逸らすと、グインと仰向けにさせられ、碧都がわたしの上に跨った。

「ちょ、」
「そうやって逃げんのか?」
「逃げてなんか、」
「逃げてんだろ?」

逃げてる…よね。碧都からも、自分からも…。

「絶対に言わない気か?」
「……」
「じゃぁ、俺が他のオンナんとこ行っても、イイってことだよなぁ?」
「……い、いよ」

胸がチクンと傷むけど、大丈夫。碧都はまだ若い。

これから色んな人に出会う。別に、わたしじゃなくたっていい。

「へぇ〜。いいんだ?俺が他のオンナに、キスしても」
「…すれば、いいじゃない」
「好き、って耳元で囁いても?」

わざとに、碧都がわたしの耳元で『好き』を強調する。

「言えば、いいでしょっ」
「エッチしてもいいの?」
「……っ、すればっ、」
「じゃぁ、行ってくる」
「え…?」

わたしからアッサリと退いた碧都は、着ていた白い服を脱ぎ捨てた。

そしてクローゼットから、ハンガーにかかった服を二着出すと、わたしに見せてくる。

「どっちがいい?」
「え、」
「どっちがオンナノコ落とせるかなぁ?杏、選んでよ」

もう言葉が出なかった。チクン、どころじゃない胸の傷み。

感情がコントロールできなくて、溢れる涙。

それでも、なんとか必死に堪えようと、瞬きをしないように、しないように…。
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