彼氏人形(ホラー)
「有里、スイッチは足首よ」


あたしがこっそり有里に耳打ちをする。


有里の視線が、葵君の顔から下へと移動した。


「スイッチを切ればいいのよね?」


「そう。お願いね」


有里が小さくうなづく。


葵君は実紗と会話をしていて、そちらに夢中だ。


有里はクッションを引いてその場に座り、そっと葵君の足元を盗み見た。


蒼太と同じ、ジーンズにソックスをはいている。


有里が少しずつ体勢を変えながら葵君に近づき、手を伸ばした。


足首まであと10センチ。


5センチ。


3センチ。


ジリジリと近づく有里と、実紗と会話を続ける葵君を交互に見る。
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